高齢化が進む日本では多職種の連携が必須
療養の現場の移り変わり
病院でのチーム医療も、急性期・回復期・維持期で内容が異なるため、それぞれにスムーズに移行できる体制と仕組みが求められています。高齢者が病院を退院し在宅や介護施設などでケアを受けながら、自立した日常生活を過ごせるよう介護や生活支援を行うためには、医師と看護師以外にも多種に渡る専門分野のスタッフとの協力・連携が必須です。また、近年では介護や医療サービスの利用者への様々な視点からの配慮が求められており、どの職においても単独ではカバーしきれなくなっているため、利用者に良質なケアを提供し続けるためには医療、福祉、保健といった各分野のスタッフ同士の連携が必要とされます。
地域包括ケアシステムと多職種連携
WHO(世界保健機関)が1980年代から説いていた多職種連携やその教育に関する報告書が近年注目されています。発表当時はあまり話題になりませんでしたが、地域包括ケアシステムの構築が活発になった現在では重要な指標になっています。高齢者の介護や生活支援には、連携の要員は医療に携わる医師や看護師以外にも、保健師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、薬剤師、管理栄養士、歯科医師、歯科衛生士、社会福祉士、医療ソーシャルワーカー、保健福祉士などの専門スタッフの連携が求められています。また、2011年の報告書では医療に携わる専門職と合わせて、社会福祉施設職員、民生委員、NPO法人スタッフ、地域コミュニティーや自治会のボランティアなどの地域支援者の協力も必要であるとしています。しかし、まだ歴史が浅く十分な知見が蓄積されていないため、実際に支援をしてみると思わぬ落とし穴にはまってしまうことがあります。例えば、立場によって理解や価値観の違いがあるため、問題が起こった際にどのように対処するべきか意見が一致しない、という課題があります。そのため、現在進行形で各地域社会が実践に基づいたノウハウを開示し、アプローチ方法の共有を進めています。
看護師の役割
看護師の職業倫理とは、「ナイチンゲール誓詞」に代表される看護の精神を基に、看護師として必要な考え方や心構えを示したものです。チームが一丸となって利用者が抱える問題の解決に取り組むには、それぞれの職種への相互理解と協力体制の強化が欠かせません。看護師は基本的な報告・連絡・相談はもちろんのこと、職業倫理に基づいて問題への対処方法を探り、また、意見の取りまとめなどを行い、職種間の連携がスムーズになるよう協力していくことが大切です。